審査講評
審査委員長
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岸井隆幸 日本大学理工学部特任教授/計量計画研究所 代表理事 それぞれに素晴らしいアイデアが盛り込まれた楽しいプレゼンテーションであった.オンライン上で審査会を行うという異例の展開の中,準備を進めてくれた受賞者の方々に感謝したい.4年目の開催となる今回は「20XX年のパブリックスペース」というテーマを設定した.的が広く,おそらく難しいテーマだったのではないかと思う.改めて全体を見返してみると,20XX年という近未来を考える上でIoT社会,環境問題,高齢化などの社会的なキーワードを十分に意識して提案がなされていることが感じられた.それから,さまざまなパターンの案が見受けられた中で,特に「参加」「繋ぐ」といったメッセージを込めた案が目立った. |
審査委員
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西沢立衛 横浜国立大学大学院Y-GSA教授/SANAA/西沢立衛建築設計事務所代表 発表者の多様なパブリックスペース観を感じられる非常に楽しい会だった.私個人としては,パブリックスペースには物体として,また概念としも「タフさ」があるとよいと思いながらプレゼンテーションを聞いていた.最後は「Public On Line」(福山智大・所邦昭)と「20XX年,自給自足する都市」(能村嘉乃)の2案の争いとなった.能村案はひとつひとつは小さな発電だが,それを村や地域単位で集積していこうというもので,福山・所案は逆にグローバルな視点で電気の道を繋ぐことが考えられていた.扱うスケールに大きな差があったものの,どちらも未来でも過去でも存在し得るような懐の大きさ,タフさを感じたように思う.最終的には自分とまったく関係ない人間と繋がっているという感覚に,都市の原型を見たような気がして,それが福山・所案を選ぶ決め手となった.しかし,審査委員が変われば結果もまったく異なるだろうとも思う.受賞者のみなさんの今後の活躍に期待したい. |
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鬼頭武嗣 クラウドリアルティ代表取締役 私自身は都市や空間など,さまざまな要素が複雑に絡み合っている対象をノードとそれらを繋ぐネットワークのモデルとして捉えている.今回は公共性を持つ特定のノードの提案もあれば,逆にプライベートなノード同士をつなぐネットワークの部分に公共性を見出そうという案も見られた.最優秀賞に選ばれた福山・所案のようにサイバー・フィジカルを融合したものから,サイバー空間を主体に検討されたものまでさまざまな案が出てきていて,今回の2次審査会に観客として来られなかった方のぶんも楽しませていただいた.審査を通して,やはり違うもの同士をインターオペラビリティを意識しながらいかにして繋ぐかという観点が重要だと改めて感じた.私自身もFintechやデータ流通の領域でエコシステム間の繋ぎ方を検討する機会も多いが,今回のコンペはいろいろ考えるよいきっかけになった.このコンペをきっかけに,自身のアイデアを実際に社会実装まで持っていける人が現れることを期待している. |
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尾崎えり子 新閃力代表取締役社長 建築や都市のコンペは初めてのことで,1次審査の段階から驚きの連続だった.本日のプレゼンテーションで出たような興味深いアイデアをわかりやすく絵にできる若い人びとが,まちづくりに興味を持ってコンペに参加くださったことにまずは敬意を表したい.最優秀賞の判断は非常に迷った.まちづくりへの市民参画を考えるときに重要なのが,いかに面白く市民が参加する動機付けができているかということだ.惜しくも最優秀賞は逃したが,私の中で一番ワクワクすることができた能村案を推薦した.同案に限らず受賞者それぞれの提案するパブリックスペースが市民にとって非常に有益な場所となるだろう.今回はあくまでアイデアの提案だが,実際につくることを考えると,さまざまな課題にぶつかるかもしれない.本当に一緒につくっていける機会があれば私も全力でやりたいと思った. |
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亀井忠夫 日建設計代表取締役社長 都市のパブリックスペースデザインコンペでは,これまで「パブリックスペース」「都市のスキマをシェアする」「SHIBUYA的なパブリックスペース」というさまざまなテーマを掲げてきた.4年目となる今年のテーマは「20XX年のパブリックスペース」である.年々課題が難しくなっていく中で,ハード寄りの提案から都市のシステムまで,提案のバリエーションが広がったことは非常に喜ばしいと感じている.例年,審査委員には建築・都市を専門としていない方にも参加いただいていて,今年は鬼頭武嗣さん,尾崎えり子さんのお二方に多角的な視点からコメントしていただいた.都市を考える上ではこうしてさまざまな意見に耳を傾けることが重要である.皆さんの素晴らしい提案が刺激となって,私個人としても都市に対する考えが深まった.とても有意義な活動をコンペを通じてできたと確信している. |