主催:長谷工コーポレーション  後援:株式会社 新建築社

最新情報

2015年1月13日
「結果発表」・「審査講評」・「作品展示会のお知らせ」ページをアップしました。
2014年10月28日
応募登録受け付けを締め切りました。
2014年7月4日
応募登録受け付けを開始しました。
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審査委員長 隈研吾

kuma

今回は僕自身とても関心のあるテーマだった.日本にとっても,こうしたシャッター通りをどういう風に活性化するかは大変重要な課題となっており,それに対して多様な案が寄せられ,よいコンペになったと思う.
「道の際を暮らす」はコの字型をした集合住宅だが,こうした集合住宅はありそうで実は少ない.中国には客家土楼という円形の大家族住宅があり,この案を見て僕はそれを思い出した.集合住宅がこれからどうやってコミュニティをつくっていくべきかを考えた時,従来のようにただ共用部をつくればよいのではなく,その空間自身がある共同性を想起させることが必要で,このコの字型の空間,特に大階段との組み合わせはとても魅力的に感じた.
優秀賞3点はそれぞれ力作で,特に軒が連なっている「軒下シェア —第二の人生が彩る商店街—」は断面図などの図面も含めよく計画されていた.こういう建築がもっと日本の集合住宅で増えてくれば,日本の未来,日本の中心商店街は意外に可能性があるのではないかと明るい希望を抱かせる案だった.
「人の歩く街 —広がる城下町—」は空間のイマジネーションを駆り立てるドローイングが巧みだった.特に真ん中の中心性のある銭湯のような空間で全体をまとめ上げており,モニュメントの新しい可能性を感じさせてくれた.
「屋台ネットワーク・ストリート」は屋台の可能性に着目している点はすごくおもしろいが,屋台と住空間の組み合わせをもう少し深くリンクさせてほしかった.

 

審査委員 乾久美子

inui

集合住宅はそもそも都市においてあふれる人口の問題を解決するためにあるものだと思うが,地方都市のようにどんどん人口が減り土地が余っていくようなところで,集合住宅をつくることに意味があるのかという素朴な疑問から今回のテーマが生まれた.逆に,そうした状況だからこそ集合住宅が何か意味のあるものになり得るのではないかと感じさせる案が出てきてほしいと思った.
「道の際を暮らす」にはしっかりとした建築の型があり,既存の街並みにマッチしそうなスケール感があった.同時に私たちが理想として思い描く風景が道で展開しそうな細やかな仕組みも盛り込まれており,審査委員の期待に応える現実的で魅力的な提案になっていた.屋根が架かっていてちょっと古い雰囲気のデザインだが,指し示されているイメージは未来に繋がっていくものになるのではないかと思った.
「軒下シェア —第二の人生が彩る商店街—」もなかなかよくできた案だった.集落的な形態を持つ提案は多かったが,こまごまとしたものが集まっているというだけの概念的なアイデアではなく,具体的なディテールまで提案されていた.それがファサードだけでなく,奥にある空間までしっかりイメージできる形を持っていたので魅力的な案だった.
地方都市の再生というきわめて具体的な目標を定めたテーマだったため,応募までのハードルは高かったかもしれないが,密度の濃い作品が集まり,印象に残るコンペだった.

 

審査委員 藤本壮介

fujimoto

今回のテーマは地方都市のストリートを集合住宅でいかに再生させるか,ということだった.敷地の真ん中に道があるため,道や街と,そこにまつわる公共空間や住居空間,そしてその間をいかに繋ぎ,豊かな場所をつくるかという点を色々な形で考えた提案が多くあった.特に小さな要素をいくらかカオス的に,複雑に組み合わせた提案が多く見られた.
「人の歩く街 —広がる城下町—」はドローイングがとても力を持っていた.集合住宅が立体的なグラデーションになっており,ちょっと空想的な未来都市のようでもあり,またノスタルジックな集落のようでもあった.地上部分はかなりオープンに開いていて,上に行くに従って親密な空間ができている.その関係が垂直方向に展開していくため,言わば空中都市のようなおもしろい提案になっていた.
「JAPANESE CRAFTSMANSHIP PROPAGATION — D.I.Y COMMUNITY」はフレームのようなものが縦横無尽にセルフビルドのような形で広がっていく提案.メタボリズムのようでもあるが非常に軽やかで,しかも工業的というよりは職人的な,さらに大規模な経済発展によって生まれるというよりは,村や地域レベルで起こることの集積がそのまま建築に繋がっているようだった.メタボリズムと対極にあるようなものがメタボリズム的な現れ方をしているところがとてもおもしろいと思った.リアリティや現実性への疑問によって佳作となったが,爽やかで鮮やかな提案だった.

 

審査委員 池上一夫

ikegami


建築の中で街に対して最も影響力を持っているのはやはり住宅で,さらに一定の規模感のある集合住宅はその街を一変させるほどのパワーがあると思っている.今回はこの集合住宅が持つパワーを使って衰退した駅前の商店街を再生するのがテーマだった.商店街を再生するためのプログラムがしっかりしていること,そして建築計画の中にそのプログラムを実現できる仕掛けが提案されていること,この2点に重点を置いて審査を行った.
「道の際を暮らす」ではここに住む住人のキャラクターが的確に表現されていた.さらにコの字型の建物に囲まれた中庭状の空間および建物と建物の間の路地空間に色々な住人のキャラクターが表出するという建築計画がすぐれており,なおかつそこに縁側や土間といった人々の出会いを生む仕掛けが具体的に提案されていた.
「屋台ネットワーク・ストリート」は移動式の屋台にそれぞれの役割や個性を与えて,そこで商売をし,住民同士のコミュニケーションが円滑に図れるようにするという仕掛けづくりがきちんとされていたように感じた.
佳作では「標本はまちに暮らしを映しだす」が印象に残っている.地方の小売店を主体とした商店街は,大型店舗に押されて衰退していくのが一般的だが,その大型店舗と連携して商店街を再生するプログラムが,現代において現実性のある提案になっていた. 力作が揃った作品の中から選ばれた14作品のみなさん,本当におめでとうございます.