主催:長谷工コーポレーション  後援:株式会社 新建築社

集合住宅には多くの人が暮らしており,その規模は「小さな街」のようなものです.そうした集合住宅が果たす役割は大きいものです.集合住宅により周辺の街に活力を与えたり,再編成したり,その規模から多くのことが可能だからです.
しかし,集合住宅による街らしさは外観だけからつくられるものではありません.周辺の街,ユニット,家族構成,その中での人びとの暮らしといったさまざまな観点での価値がお互いに連続しながらつくられるものです.集合住宅をそうした「小ささ」がつくり出す「小さな街」と捉えることで,今までにない大きな可能性が生み出されるかもしれません.
さらに,そこに住み続けるという時間も小さな単位の積み重ねです.集合住宅に少しずつ手を加えながら,時間が経過した時につくり出されるものもまた,街としての集合住宅には必要なことです.エネルギーを考えたスマート化も,設備・機能からではなく,曖昧で不均質な自然との小さな連続を考えることが答となるかもしれません.
先日,最後の同潤会アパートである上野下アパートが解体されました.関東大震災の復興支援としてつくられ始めた同潤会アパートにはガスや水道といったインフラ,食堂や共同浴場,店舗などを一体とした街がつくられていました.そうした集合住宅がつくり出す街としての先例も,アイデアの参考になるかもしれません.
集合住宅を閉じた箱として考えるのではなく,街っぽさを持つものとして考えてください.街のような豊かさを持った集合住宅の提案を期待します.