共催:Airbnb Japan株式会社 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 株式会社日建設計
  後援:株式会社新建築社
  

最新情報

2018年2月1日
「審査講評」ページをアップしました。
2017年11月20日
「結果発表」ページをアップしました。
「コンペ講評会観覧者募集」ページをアップしました。
2017年10月18日
応募登録・作品提出を締め切りました。
2017年7月3日
ホームページをオープンしました。
応募登録の受け付けを開始しました。
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過去のコンペ

審査講評

「都市のパブリックスペースデザインコンペ2017」は2017年11月7日(火)に審査会が行われ,189点(登録件数407件)の中から,最優秀賞1点,優秀賞3点,佳作6点が選出された.12月16日(土)には,東京都千代田区のTRAVEL HUB MIXで表彰式と講評会が催され,審査委員長の岸井氏より表彰状と賞金が授与された.表彰式後は,上位4組によるプレゼンテーションと,審査委員らによる「パプリックスペースの可能性」についての講演が行われ,講評会では受賞作品に対して審査委員と受賞者とで意見が交わされた.

左:受賞者10組と審査委員,主催者ら関係者による集合写真.式後は懇親会が行われた. 右上:講評会での受賞者と審査委員らのディスカッションの様子. 右下:会場には受賞作品のパネル

 

岸井隆幸

日本大学理工学部土木工学科教授


今回もたいへん力の入った作品が世界中から数多く寄せられた.「都市のパブリックスペース」に関心を持ってこのコンペに参加されたすべての皆さまに感謝したい.
都市のスキマとは何か,スキマをシェアする意味はあるのか,しかもこうした営みに多様な価値を見出そうとする何とも漠然としたテーマであったが,それに果敢に挑戦したアイデアは多種多様であった.
新たな空間的処理を施す提案,ICTを駆使してシェア・活用しようとする提案,アクティビティを誘導して価値を生み出そうとする提案などさまざまなアイデアが交錯した.われわれが日常意識することが少ない「地」や,強固なアイデンティティの狭間で無機質となっている「空間」,機能に特化してその存在が意識されていない「要素」などを輝かせて,価値を共有するためには,従来の建築の概念を越えたより柔軟な発想が必要である.これからも都市の空間構成・社会のシステムを読み取りながら「新しい建築」の扉を開いていただきたい.

 

西沢立衛

横浜国立大学大学院Y-GSA教授/SANAA/西沢立衛建築設計事務所代表


今年もさまざまな国から応募があり,国際的な多彩さを感じた一方で,課題の難易度の高さもあって,審査は難しかったが,たいへん楽しかった.最優秀賞となった「URBAN PLUGIN」(Li/Chen案)は,いろいろなプロダクトが街中全体に広がる提案で,その現代的なセンスと,ソフトの提案性から,審査委員の支持をもっとも受けた.優秀賞となった「"Noise" Garden」(Guan/Wu案)は,ラウンドアバウトに囲まれた無用の空間に,彫刻のような音の建築空間が生まれるという提案で,プログラムの面白さと,ランドマーク的な形の魅力との両方を兼ね備えていた.同じく優秀賞の「Pedestrian Highway」(Sutjijadi/Putra案)は,渋谷の雑居ビル群の隙間空間を利用した公共空間の提案で,ビルとビルの隙間,渋谷の地形をうまく利用しており,また単にアイデアだけの提案というよりも,建築的な魅力が感じられて,同傾向のほかの案よりも抜きん出ていた.「都会に隠れた山林」(Li/Hao/Long案)は,中国の造園史をベースとして現代都市のランドスケープの新理論を提案したもので,その理論性,発想の面白さは,今回のコンペの中で際立っていた.「Pilgrimage of Space and Time ―名古屋中心部「会所地」-「公開空地」ネットワーク計画」(市川/北村/藤枝案)は,ビルに囲われてアンコと化した歴史的空間を現代に蘇らせるというもので,コンペ課題にもっともストレートに応えた案のひとつと出会った.

 

齋藤精一

株式会社ライゾマティクス代表取締役社長

パブリックは単なる開放された場所・モノという従来の概念から,人やモノを繋いだり都市を活性化するためのエンジンに大きくシフトしようとしている.今回のコンペの審査を通して国内外のさまざまなアイデアを拝見して強く「パブリック」という概念の拡張を感じた.物理的な建設物だけがそれをつくれるのではなく,SNSやウェブサービスなどのコミュニケーションツールも含めた提案が期待通り多く,建築=ハードウェア的な考え方ではなく,ソフト・運営方法も含めたパブリック建築・空間のあり方が必要な時代が明確にきたと思う.私自身の仕事の中でもそれを意識するシーンが多く,これから建築を創造する人は建設だけではなく,その場所がどのように活用されるか,活用されるために必要なものは何か,時代に応じてどのように変化できるかも含め,提案することが重要だと思う.今回のコンペにはそんな新しい建築家の可能性が多く見られたと思う.

 

谷川じゅんじ

JTQ株式会社代表・スペースコンポーザー

都市という文脈におけるスキマ=行間表現が生み出す創造的未来に期待し臨んだ審査会.現段階での実装実現性だけにとらわれない“発展可能性”,提案が実現されることによって都市生活そのものの意識変容が起こり得る“共感共振性”なども意識しながら提言を審査した.審査のアプローチは3点.
①Environment〈環境的視点〉:どのような環境を都市と定義し前提を整えているか.
②Situation〈状況的視点〉:どのような状況を想定し提言ポイントを抽出しているか.
③Program〈計画的視点〉:どのような切り口で持続性や事業性を保持運用していくか.
評価軸に沿ってアイデアの定量的評価と情緒的評価を図った.提案は実に多岐にわたり建築的空間領域の提言に留まらず,事業ソリューションやオペレーションも含む,まさに都市機能における「スキマ」が浮き彫りになったコンペティションであった.人間社会における文化と文明が集積し,機能拡張していく仕組みを都市とするならば,スキマは営みに潤いを与え活力を創出し,関係を密に育む場所であると改めて実感した.きわめてポジティブに作用する都市空間における感性フロンティア=スキマ.その期待を皆が感じ論じている,そんな読後感が印象として残る審査であった.