主催:福岡地所株式会社 株式会社福岡リアルティ
  後援:株式会社新建築社   
  

最新情報

 

2021年3月31日
「2次審査結果発表」・「審査講評」ページをアップしました。
2020年12月10日
「1次審査結果発表」ページをアップしました。
2020年7月1日
ホームページをオープンしました。
2020年11月5日
応募登録の受け付けを終了しました。
2020年7月1日
ホームページをオープンしました。
応募登録の受け付けを開始しました。

審査講評

審査委員長

 

重松 象平

OMAパートナー,OMAニューヨークディレクター


このコロナ禍というタイミングで非常に意義のあるコンペだったと思います.また,私の地元・福岡のよく知っている敷地を対象に,審査委員長として多方面で活躍されている豪華な審査委員の皆さんと対話しながら多様な案を議論でき,たいへん貴重な経験をさせていただきました.応募案には,自立するプログラムであったり,参加型で使用者の声を反映していくといった提案が多く,どうにかして今の社会を変えたいという皆さんの意思が伝わってきました.これを建築を通して伝えるのはなかなか難しいことなのですが,とても前向きな傾向だと思います.その上で,提案をどう現実的にしていくのかが次の課題だと思いました.皆さんには,たとえコンペであっても今後関わられていく社会において実装できるかどうかを真剣に意識してほしい.まだアイデアの段階で,建築や事業性を持つに至っていなくても,その思考や挑戦を続けることが建築やデベロップメントのあり方,街のつくり方を変えていくと信じています.コロナ禍に募集を開始したコンペとして,応募する方も審査する方も難しかったかもしれませんが,みんなで考え議論したこの熱と蓄積を保つためにも是非とも今回のコンペのような機会を継続してつくってほしいです.多様な社会の変化をアグレッシブに都市や建築に反映させていくことで何かが生まれるような気がした,本当に希望が持てる時間となりました.

審査委員

 

馬場正尊

オープン・エー代表取締役,東北芸術工科大学教授


解決すべき課題が多彩で,提案する方もそれを審査する方も,どこに焦点を絞るかがポイントとなりました.結果的に,その作品が現在の社会に対してどのような問題提起をしているのか,多少の拡大解釈も交えながら発展的に議論するような審査になったと思います.アイデアコンペとはいえ,主催者からは近未来の福岡の姿をリアルに希求している熱量が伝わってきたので,提案された風景が本当にこの場所に必要なのか,それを実現するにはどんな方法論があるのか,議論を誘発した作品が上位となりました.しかし,強烈な未来を,綿密な事業性や技術で意地でも実現させようとする力強さに欠けていたのは,少しもどかしかった気もします.
今回のコンペは,現実への導火線となる役割を果たしている気がして,そのあり方に可能性を感じました.海外からも含めリモートでのプレゼンテーションなど,この時代ならではの実験がさまざまに織り交ぜられたのもエポックでした.

 

林千晶

ロフトワーク共同創業者 取締役会長


今回の審査会ではアフターコロナの建築がどうあるべきかが問われていました.審査委員である私たち自身もまだその答えは見えていないので,応募する方は提案の糸口を見つけるのが非常に難しかったと思います.実際に皆さんの提案から,建築に縛られたくはないけれど,どうしたいのかまだ見えていないということが伝わってきました.ただ,見たことのない「消費者」からではなく,自分も知っている「ひとりの人間から物語が始まる」ということにもっと意識してみてはどうしょう.建築家は課題を解決できる人なので,自らが悩みを持っているかわかりませんが,悩みを抱えている人は身近にいるはずで,そこを起点にひとりの人間から展開される,でも潜在的に大きな提案ができると思います.最優秀賞に選ばれた「Workick-City Momochi」は,彼らの熱意に心惹かれるものがあったと同時に,「建築はプロトタイプで,更新され続ける」と明確に言っていたところが印象的でした.建築家がよいと言ったものを消費する時代は終わって,生活者が提案をし続け,変わり続ける建築のあり方に移っていくのだと思いました.同時に,これまで家庭という単位が社会基盤でしたが,それが次第に希薄になりつつある.これから人と人とを繋ぎとめる軸が何になるのか,考えさせるきっかけをもらったと思います.

 

松島倫明

『WIRED』日本版編集長


今回このようにオンラインで審査会を実施できること自体が,2020年代において建築に何を求められるのかを考える貴重な機会になりました.テクノロジーの文脈ではよく「アーキテクチャ」という言葉を,建築という意味を拡張させて社会の構造や人びとの生活,ポリティクス等も含めたものとして用いて,その「アーキテクチャ」をテックがどう設計していくのかに着目します.今回の応募作でも,まさに建築は単純に建物を設計することを超えて広く社会に開かれているのだと改めて思いました.その中で,審査会では余白のマネジメントをどうするか,がひとつの話題に上がりましたが,いかにアーキテクチャが人びとの自立性を高めていくかは今の時代の重要なテーマだと思います.そういった意味では,最優秀賞に選ばれた「Workick-City Momochi」にはキックボードという自立性が高く街に開かれたマイクロモビリティが中心に据えられていて,その点も評価しました.開かれたアーキテクチャとは何か,改めて考える機会となりました.

 

榎本一郎

福岡地所代表取締役社長


コロナ禍で,都心の求心力が弱まった今,開発における既存の概念は,ゼロクリアの状態になり全員がゼロからアイデアを出して競争していく局面にあると感じています.つまり丸の内でも福岡ももちでも,同じインパクトで世の中に発信でき,会社の社長も学生も同じように街づくりに対して提案できるようになったのです.その中で,本コンペで皆さんにいただいた提案からは,タワーを建てて住居やオフィスを密閉することへの限界を感じさせられました.従来のように窓のある一面だけではなく,360度すべてで外部に触れたいという願望です.最優秀賞の「Workick-City Momochi」も求心力がないと成り立たないし,ももち全体にも広がらないでしょう.この提案にはそのための求心力が何なのか,現時点では答えが出せていなかったように思います.求心力が,大学の研究室なのか,カリスマを持った人なのか……何に対して人が集まってくるのか,これから一緒に考えましょう.ありがとうございました.