第9回大東建託賃貸住宅コンペ アイデア提案部門 アフターコロナの社会において、
賃貸住宅はどう変わるか
テーマ アフターコロナの社会において、
賃貸住宅はどう変わるか
第9回大東建託賃貸住宅コンペでは、感染症 (COVID-19) 拡大のリスクに直面する現在の状況において、社会活動、経済活動への影響を実際に私たちが体験し、これからの賃貸住宅には何が求められるのか、どういった賃貸住宅がこれからの私たちの生活を支える場所となるかを考えていただきたいと思います。今まで当たり前のこととして受け入れ、変えることができなかった仕組みは自然崩壊し、新たな枠組みや仕組みの創造が求められています。これを変革への大きなチャンスと捉え、これからの賃貸住宅のあり様を一緒に考えてください。引き続きたくさんのご応募をお待ちしています。
賞金
- 1位〜5位持ち点配分方式最大 300万円 (総額最大500万円)
- 入選5点各10万円
※賞金はすべて税込です。
スケジュール
- 2020年9月1日 (火)応募登録開始
- 2021年1月6日 (水)登録・作品提出締切
- 2021年1月中旬〜下旬1次審査結果発表
- 2021年3月7日 (日)2次審査+表彰式
- 2021年4月1日 (木)最終結果詳細発表
1次審査結果発表:通過者に通知すると共に、当ウェブサイトにて発表します。
最終結果詳細発表:『新建築』2021年4月号、および当ウェブサイトにて発表します。
新型コロナウイルスの感染が拡大している現状を受け、みなさまの健康・安全面を第一に考慮し、応募方法についての選択肢を増やし、郵送だけでなくメールでデータ(PDF)での提出も受け付けます。詳しくは応募要項欄の提出物のところをご確認ください。
審査方法
■今年から審査方法が変わります■
審査は2段階審査方式で行います。
1次審査ですべての応募案の中から2次審査に進む上位5作品を選出し、さらに、「入選」5作品を決定します。
2次審査は、通過した5作品のプレゼンテーション、質疑応答、審査会(持ち点配分方式)を経て、1位、2位、3位、4位、5位をその場で決定します。
- 賞金と持ち点配分方式について
- 1位〜5位
- 最大300万円(総額最大500万円)
- 入選 (5点)
- 各10万円
2次審査では新たに持ち点配分方式を採用します。
各審査委員は自身の持ち点を通過5作品に対して自由に配分していき、その合計の多寡で各賞(1位、2位、3位、4位、5位)と賞金を決定します。各審査委員の持ち点は100ポイント (審査委員6名の合計=600ポイント) あり、各作品の取得ポイントに対応した賞金が授与されます (下記、対応表を参照)。
- ポイント
- 賞金額
- 400~600
- 300万円
- 250~399
- 200万円
- 200~249
- 150万円
- 150~199
- 100万円
- 100~149
- 50万円
- 50~99
- 30万円
- 0~49
- 10万円
※ 最大賞金額と最小賞金額は下記の通りです。
400ポイント以上:300万円 49ポイント以下:10万円。
※同ポイントの場合は、同賞、同賞金額が与えられます。
※1位と2位が同じ賞金額の場合は、1位にのみ30万円を加算します。
例)
作品A:390ポイント → 200万円 → 1位 → +30万円 → 賞金額230万円
作品B:250ポイント → 200万円 → 2位。
賞金はすべて税込です。
応募要項
応募資格
グループ・個人を問いません。
登録方法
本コンペに参加するためには、事前に当ウェブサイトの登録フォームから登録を行ってください。必要事項を入力し送信すると、e-mailで登録番号が交付されます。この登録番号は応募にあたって必要になりますので、紛失しないよう、記録・保存してください。
・交付後の、登録番号に関するお問い合わせには応じることができません。複数案応募する場合には、作品ごとに登録が必要です。
・応募登録は当ウェブサイト以外からはできません。
・登録後、内容に変更があった場合は再度登録をし直してください。
・携帯のメールアドレスでは登録通知の返信メールを受け取れない場合があります。提出物
A2サイズ(420mm × 594mm、片面横使い1 枚)
提案のタイトル/「賃貸」の新たなスキームを示すダイアグラム等/設計意図を表現したものをケント紙あるいはそれに類する厚紙1枚に納めて提出してください。表現方法は自由。立体(突起物や凹凸)、額装、パネル化は不可。裏面は白紙としてください。登録番号の記載について
提出用紙の表面右下に35ポイントの文字サイズで登録番号を明記してください。 登録番号以外の応募者を特定できる内容は記載しないでください。提出先について
株式会社新建築社「大東建託 賃貸住宅コンペ 係」(必ず明記のこと)
〒100-6017 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング17F
TEL. 03-6205-4382登録・作品提出締切
2021年1月6日(水)消印有効
※送付のみ受付。持ち込み、バイク便は不可。◾️新型コロナウイルスの感染が拡大している現状を受け、みなさまの健康・安全面を第一に考慮し、応募方法についての選択肢を増やし、郵送だけでなく、メールでデータ(PDF)での提出も受け付けます。◾️
メール提出の場合
・受付メールアドレス
kentaku@japan-architect.co.jp・締切
1月6日(水) 23:59・提出方法
メール件名: 登録番号を記載してください
(例:登録番号が「00123」の場合は「00123第9回大東建託賃貸住宅コンペ応募」としてください。)
本文:登録番号、代表者の氏名、住所、電話番号、メールアドレスを記載して、PDF(3~5MB以内)を添付してください。すでに郵送にて応募作品を提出された方は、データ納品は必要ありません。
その他
・応募作品は未発表のものに限ります。
・応募作品は返却致しません。必要な場合はあらかじめ複製をしておいてください。
・入賞後の応募者による登録内容の変更は受け付けません。
・同一作品の他設計競技との二重応募はご遠慮ください。
・本コンペ応募作品の著作権は応募者に帰属しますが、応募作品の発表に関する権利は主催者・後援者が保有します。
・入賞後に著作権侵害やその他の疑義が発覚した場合は、すべての応募者の責任となります。 また、そのような場合は主催者の判断により入賞を取り消す場合があります。
・2次審査用の模型は返却いたしません。
・本コンペにおいて取得した個人情報は、主催・後援・コーディネートが共有しますが、本コンペの運営以外に使用いたしません。また、第三者に譲渡や転売はいたしません。
WEB投票について
WEB投票を行います!
1次投票:1月29日(金)〜3月3日(水)
2次投票:3月7日(日) 13:20〜16:30
今年は、応募された方も応募されなかった方にも、WEB投票を通して参加して頂きたいと思います。
通過5作品の中から、1位の予想をしてホームページ右下の投票フォームから投票を行ってください。
WEB投票は2回行われます。
1回目は、ホームページ上で作品を閲覧しての投票となります。
2021年1月29日(金)0:00〜3月3日(水)23:59まで投票ができます。
こちらからも投票可能です。
WEB投票の結果は、審査には影響されません。
1次投票の結果のみ、審査会当日のプレゼンテーションの発表順に影響されます。
2回目は、2次審査会の生配信を視聴しての投票となります。
2021年3月7日(日)13:20〜16:30までの受付を予定していますが、スケジュールによっては時間が前後する可能性があります。
2回の投票を経て1位を予想をした方の中から抽選で、30名の方に図書券 1万円分をプレゼントします。
※1人最大で2回投票することができます。
1次審査会通過5作品の詳細は、このホームページの1次審査結果発表のページをご覧ください。
2次審査+表彰式
2021年3月7日(日)
ROOFLAG賃貸住宅未来展示場/東京都江東区東雲1-4-1
2次審査と表彰式は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に配慮し一般観覧を中止しますが、代わりに動画をライブ配信する予定です。また、ライブ配信中に視聴者参加型のウェブ投票も行う予定です。1位を予想した方の中から抽選で賞品をプレゼントします。
※動画配信とウェブ投票の詳細については、後日、当ウェブサイトにてお知らせします。
1次審査通過作品に基づいた2次審査用資料(プレゼンテーション用のパワーポイントデータ・模型など)をご用意いただき、会場にてプレゼンテーションをしていただきます。審査委員との質疑応答、審査会を経て、1位、2位、3位、4位、5位を決定します。1次審査通過者であっても、2次審査に出席できない場合は選外となりますのでご注意ください。
2次審査用資料であるパワーポイントデータ、模型は必須で、その他資料などについての詳細は、1次審査後、通過者に速やかにお知らせします。2次審査終了後、表彰式を行います (入選の方は代表者に表彰状を発送します)。2次プレゼンテーションの5組には、2次審査用資料の制作費として15万円(税込)を支給します。また、各組2名分まで交通費を支給します。
2次審査結果発表
「第9回 大東建託賃貸住宅コンペ」は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に配慮し、2021年3月7日(日)に、一般観覧を中止し、オンラインでのアイデア提案部門のプレゼンテーション、2次審査を行いました。237点(応募登録440件)の応募案の中から、1次審査通過5組によるプレゼンテーションと質疑応答、その後の審査(持ち点配分方式)を経て、1位、2位、3位、4位、5位を決定しました。
1位獲得ポイント210pt/賞金150万円
板倉知也(信州大学大学院)
「With Machine Apartment
-弘伸製作所を対象とした分散的市街地における機械と暮らす賃貸住宅の提案-」
【敷地】 愛知県豊田市大林町
【抽出した地域の課題】
板金加工を専門とする町工場の弘伸製作所を対象とする。
豊田市大林町の住宅街に位置しており、増改築により時代に対応してきたが、後継者不足と新型コロナウイルス(以下、コロナ)の影響により、衰退の一途をたどっている。
【賃貸の仕組み】
機械と暮らす賃貸住宅を提案する。既存の町工場と増築空間が上げている利益をリサーチした上で、それぞれの空間と利益に応じた用途を挿入する。
町工場機能の縮小による減益は避けられないが、賃貸住宅、農地、シェアリングサービスによって一定の利益を確保する。利益を上げていない未使用倉庫には公共図書館の機能を挿入して街に開く。
【建築空間】
機械が生み出す住空間。機械がつくるさまざまな中間領域が暮らしに必要な人と人の距離を生む。
《審査委員コメント》
○コロナ渦で日本の経済基盤やその先の産業構造が変わっていくかもしれない時代に、どういうところに歪みが生じるかを自分の経験と地続きなところから見極め、それを次の時代の新たな価値と捉えて賃貸住宅のあり方が構想されている。素晴らしい提案だと感じた。(千葉)
○工場の後継者不足に対して、この場所ならではのコミュニティを想定し実際に人が住まう新たな場所(賃貸空間)となっている。次の世代に繋げていこうという考え方に説得力があった。(赤松)
○個人的な背景を説得力に繋げられている。空間における機械と人の関係や距離の細部、農業のことや図書館の個人的な思い出も含めて、リアリティを感じた。素晴らしいと思う。(横川)
○自分ごとであるからこそ熱量が非常に大きく心を動かされた。提案で終わらず、実現することが大きく社会を変える原動力になるのではないかと期待している。(小林)
2位獲得ポイント150pt/賞金100万円
宮下幸大(金沢工業大学大学院) 宮原美佳(椙山女学園大学大学院)
「村ごと賃貸! -野沢温泉村における湯仲間の再編と新村人の賃貸住宅の設計-」
【敷地】 長野県下高井郡野沢温泉村
【抽出した地域の課題】
地方の村としては珍しく人口増加が見られる。近年は家族連れの移住や空き家などを購入して別荘にする外国人が多い。課題は、野沢温泉村の伝統を受け継ぐ人がおらず、伝統が失われつつあること。
【賃貸の仕組み】
13軒ある共同浴場も、伝統的に行われてきた湯仲間という組織が高齢化・後継者不足に陥っている。新たな住人がSUB湯仲間として村人と仲よくなれる仕組み、村の空き家・物件情報を入村者と繋ぐ村営不動産を設置する。
村に足りない要素を補うかたちでSUB湯仲間が入ることで村人の生活も豊かになる。
【建築空間】
村に残る資産(建物)を活用し賃貸住宅を設計する。
「既存の建物+賃貸住宅+公共空間」と、ひとつの建物が何役も担うように徐々に改修を行う。
《審査委員コメント》
○コロナ禍で住まい方が大きく変わる状況にあって、ローカルコミュニティや地方が抱える課題、移住者を受け入れることによる地域活性が提案されている。移住者ができること、この提案で温泉街をどう変えられるのか、先のビジョンも展開してほしい。(横川)
◯地域に関心を持って展開するにあたっては、最初から広げすぎてしまうとどういったエリアをつくりたいかが人に届かない場合が多い。何かひとつ自分たちなりの切り口を探し、コアとなるものをつくって広げていく方がよいと感じる。(木下)
◯実際に野沢温泉村に訪れ計画された想いが込められている。移住者と村人が多面的な関係を構築できる具現化を期待したい。(小林)
3位獲得ポイント100pt/賞金50万円
島田貴司 明石卓也(九州大学大学院)
「源泉換気住宅」
【敷地】 福岡県福岡市南区
【抽出した課題】
コロナにより人びとは外部から隔離され、孤立した暮らしを強いられた。その反面、「換気」の重要性が再認識されるきかっけともなった。
【賃貸の仕組み】
換気に着目し、単に空気を入れ替えるのではなく、換気により生み出される空気の流れが人びとを繋ぐ。そこに源泉という恒久的な動力を導入することで新たな換気による賃貸住宅の暮らしを提案する。
【建築空間】
側面に換気口の付いた煙突とその側面に纏わりつくように配置した住戸を敷地に建て、熱源として温泉の温かい空気を用いて建物内部に上昇気流を発生させる。この煙突内の温かい空気を用いた「重力換気」によって住戸内の換気を行う。この煙突状の建物に付随するかたちでさまざまな場所が構成されている。
《審査委員コメント》
◯温泉という地場に密着した自然資源の循環を建築的な核としながら、それに寄り添うように生きていく提案は、未来に向けて大きな可能性があるのではないかと思う。(千葉)
◯エネルギーや環境的なテーマを建築に一体化させつつ新たな賃貸空間としている。機能複合など発展系を期待したい。(赤松)
◯デザイン力と表現力は素晴らしい。コロナ禍の賃貸住宅を考える上で、換気というテーマだけでなくもう少し社会問題と向き合う視点がほしかった。(横川)
4位獲得ポイント80pt/賞金30万円
菅野凌 雨宮慎吾(フリーランス)
「サブスク住宅」
【敷地】 東京都渋谷区
【抽出した課題】
コロナ禍では、家に求められる機能が増え、在宅でさまざまな活動をすることの価値が見直された。特にリモートワークの普及によって、家にいる時間が増え、自分の住む環境を重要視する人が増えたのではないか。
【賃貸の仕組み】
一部屋にとどまる人の流れを加速させることで、もっと身軽な賃貸住宅(住まいをサブスクする)を考える。
家の機能を拡大、拡張し、特徴を持った30部屋を日によって自由に借りることができる仕組み。その仕組みは携帯電話など(オンライン)を使用し、空間を介したオンラインコミュニティを生成する。
【建築空間】
各部屋は「仕事の場」と「暮らしの場」のふたつを持つ。そのどちらかに属する機能を特化させることで「仕事の場」と「暮らしの場」の割合が変わっていく。
《審査委員コメント》
◯住まい方が多様になっていっていることは社会で共有されているが、空間的な提案はまだまだ足りていない。従来の部屋の計画の仕方では不自由だと捉えらていたことが新たな需要に結び付くという、まったく異なる価値感で空間をつくっていくアプローチがたいへん魅力的である。これからの展開にも期待が持てる。(千葉)
◯ホテルと何が違うのか、従来の賃貸とは何が違うのか、サブスクによる生活ができた時にどういう魅力があるのか、もっと明瞭に絞りこんだ視点があった方がよい。(木下)
◯新しい価値感で空間を選択する生活が行える、今後必要な視点。これからもこういった展開にチャレンジしてほしい。(峠坂)
※5位の「ポストコロナの家 ─街のお一人様賃貸は小さな地縁を届ける─」は,諸般の事情により賞を辞退されました。
入選
彭君扬(メルボルン大学)
「感覚を通して人間との繋がりと距離感を作る」
入選
山口貴司(山口貴司設計事務所)
「線の賃貸」
入選
白鳥恵理(白鳥建築設計研究室) 山口一紀(フリーランス)
「会社が社会をかえる」
入選
儲立人(中国美術学院)張喆涵(早稲田大学大学院)
「呼吸できる家」
入選
喜納健心(名古屋市立大学大学院)
「現代沖縄住宅改訂」
審査講評
千葉学(審査委員長 ・ 千葉学建築計画事務所 東京大学大学院教授)
ポストコロナを考えるというテーマは難しかったと思いますが、素晴らしい提案が数多くありました。正直なところ、僕たちも「ポストコロナで一体何がどう変わるのか?」 といった課題に答えのないまま審査に臨んでいました。僕自身もコロナ以降は仕事や生活のあり方が大きく変わり、不自由な生活が続いているのですが、そこで改めて思うのは、不要不急なことをやめると経済は止まってしまう、逆に言うと、生きていくのに必要なことだけでは経済は回らないという現代社会の特異な状況です。高度経済成長期に象徴されるように、大量生産大量消費、それを支えた差異や新奇性といった価値が、きわめて脆弱なものであったということです。一方で不要不急の中には、文化を育んでいくために不可欠なことがあることも確かです。つまりこれまで僕たちが依存してきた社会システムや価値基準を見直さなくてはならない局面にあることを突きつけられているのだと、僕自身はこの1年で痛感しました。
その意味で、建築に何が可能かということに関しては、社会が変わらない限り難しいと後ろ向きになってしまうこともあったのですが、今回皆さんの提案を拝見し、改めて建築を考えることの意味、建築を通じて社会に対してしっかりコミットすることが可能だと教えてくれた案が多く、素晴らしいと感じ、またとても勇気づけられました。
今後も「住むこと」、「働くこと」は、不要不急になるはずもなく、それが形を変えたり仕組みを変えたりしながら続いていきます。それを単なる差異や新奇性によってではなく、人に寄り添いながら、土地や生業との関係性の中に紡ぎ、それを実現するための建築をつくることは、今後建築に携わる人たちが、リアルな空間を通じて社会に対して発信していく強いメッセージになると思っています。
最近読んだ福嶋亮大(立教大学文学部准教授)さんの『復興文化論 日本的創造の系譜(青土社、2013)』の中で、日本の文化は復興というプロセスの中で培われたということが書かれているのですが、とても示唆的です。日本は震災や火災や戦災など、困難な状況から立ち直る中で日本固有の創造力が育まれてきました。今回のコロナ禍もこういう契機になるのだろうと思います。皆さんがさまざまな場面で社会に対し、素晴らしい提案をしてくれることを期待しています。
赤松佳珠子(CAtパートナー 法政大学教授)
今回はLIVE配信だったので、応募してくださった方、来年以降チャレンジしようとしている方たちが見てくださったことと思います。オンラインだからこそ、多くの方に見ていただけたことは前向きに捉えたいと思います。
コロナ禍となって約1年が経ちます。現代において、世界中が同時にここまで劇的に変わる経験は誰もしたことがなく、大きな変革期にあります。社会がまさに変わろうとしている中、建築はどうあるべきなのか、という大きなテーマに対して皆さんがとても真摯に向き合ってくださったと思います。作品にはさまざまな思考が凝縮されていてとても刺激を受けました。少子高齢化、地方衰退、空き家問題、東日本大震災からの復興道半ばなど、多くの問題を抱えている日本に、さらに新たにコロナ禍による経済停滞、人びとの日常生活そのものが脅かされる事態など、ネガティブなことばかりが目につきますが、こういう時だからこそ新たな建築のあり方や考えが生まれてくるはずです。今回の提案を見ていると、この状況だからこそ出てきた発想がとても多かったと思います。今まさにこのコロナ禍を生きている若い人たちが、この状況に向き合い、前向きにさまざまな思考を巡らせている。その発想の中にこそ今後の未来をつくっていくものがあると感じられました。今回このような審査をすることができ、私自身勉強になりました。
横川正紀(ウェルカムグループ 代表)
このコンペが、「仕組みと空間」を問うコンペであるという特性もあるのだと思いますが、今回のアフターコロナの課題はある意味で難しい課題だったのではないかと思います。大きな時代の変化の中で、手がけている実際の事業においても働き方・住まい方の変化をどう捉えていくかは重要だと思っていて、それは想像し得ない可能性を含んでいるからです。アフターコロナをテーマとした賃貸住宅のあり方には、コロナ禍により顕在化してきた現代の特徴を捉えたさまざまな提案がありましたが、結果的に審査を通して思うことは、素晴らしいアイデアの中にあるリアリティや暮らしをどう見つめるか、その仕組みを考えた結果設定される「賃料」の存在は非常に重要なのだということです。新たな賃貸スタイル部門で既に竣工しているプロジェクトの中には、実際に地域と繋がり、今まであり得なかった賃貸のあり方が出てきている。その時々の場所や仕組みの設定を根拠として、賃料がさまざまなことを反映している。そう感じました。アイデア提案部門と共にパラレルにリアリティの世界を見ることで、より多様化した賃貸住宅のあり方が受け入れられている社会を認識することができて楽しかったです。新たな時代の変化に繋がるきっかけになったら素晴らしいなと思います。私もたいへん勉強になりました。
木下斉(ゲスト審査委員 ・ 一般社団法人AIA代表理事内閣府地域活性化伝道師)
ゲスト審査委員として2回目の参加になりましたが、今回もコロナが収束せずオンライン形式になりました。
応募していただいた作品を見て感じることとして、これらの提案はアイデアとはいえ、実現を前提としたプランニングで、その実現の過程を見据えて審査させていただいているのかなと。今後は皆さんの考えをどう修正して実現していくかを考える、それが本当のプランニングだと思います。今回の提案はどれも,これからの社会の中で必要な要素が含まれているものばかりだったと思うので、今後もそれを示していく、社会で実装していくために、審査会で議論されたことは重要な視点になると思います。
これから日本社会全体が人口減、世帯減が激しく進む中で、新たに住宅を分譲方式で次から次へと建てる形式より、選択肢が多様にある良質な賃貸住宅の市場供給はもっと広がるべきだと思っています。今回のコンペで拝見した提案はコロナ禍における社会の変化と日本が抱えている中長期にわたる問題の接点がいくつも出ていたのではないかと思います。ぜひアイデアに止まらず、形にしていただきたいと心より願います。
小林克満(大東建託株式会社 代表取締役社長)
結果としての順位はつきましたが、今日発表をしていただいた2次審査まで残られた皆さんには賞賛を送らせていただきます。また、本日視聴に参加していただいた皆さまに、主催者を代表しまして感謝申し上げます。
毎回思うことなのですが、2次審査では提案者の方から直接お話を聞くことが、とても楽しく、価値があると考えています。プレゼンテーションボードだけでは分からない想いや、より詳細な話を聞くことができるからです。今回のアフターコロナの課題については非常に重いテーマだったと思います。コロナによって失ったもの、変化が加速されたもの、それらへの問題意識がさまざまに取り上げられて提案されていました。課題の捉え方は本当に共感できるものが多かったと感じます。また,新たな賃貸スタイル部門においては、賃貸住宅の可能性とはこんなにも多様であるのだと改めて教えていただけた機会だったと思っています。これからアフターコロナの社会においては一過性の変化(終了)と本質的な変化(継続)、そのふたつに分かれるのではないかと思います。今後はその見極めが重要になるでしょう。
今日提案をいただいた中で、本質的な変化を捉えてひとつでも実現に向けて着手できるものがあれば、このコンペを開催している意味や価値があり、こんな嬉しいことはありません。いずれにしろ暮らしや働き方に大きな変化を与えているコロナを、少しでもポジティブに捉えてコロナからの学びを成長のために活かしていくことができれば、その価値や意味があるのだと思います。次回、また賃貸住宅コンペを通して皆さんからの新しい提案に出会えることを楽しみにしています。
峠坂滋彦(大東建託株式会社 商品開発部長)
今回、アフターコロナをテーマとして第9回目を行わせていただきました。すべてオンラインにての試みは初めてでしたが、アイデア提案部門の板倉さん、新たな賃貸スタイル部門の3組のプレゼン、その熱量や熱い思いがとても印象的でした。コロナ禍により非接触・オンラインだったとしても、伝わるものはそこに携わる人の思いや熱い気持ちなのだなと痛感しました。
コロナを経験して社会の仕組みは大きく変わっていくと思いますが、普遍的な価値、人がしっかり繋がっていく、そういったことの大切さを再認識し、次回の第10回開催も皆さんと一緒にさまざまな課題をクリアし、新たな価値を生み出すようなものにしていきたいと思います。
2次審査会LIVE配信の様子