共催:三井不動産レジデンシャル 新建築社
応募要項 応募要項
2018年2月1日
審査講評ページをアップしました。
2018年1月29日
2次審査結果発表ページをアップしました。
2017年10月16日
1次審査結果発表ページをアップしました。
公開2次審査観覧希望者募集ページをアップしました。
2017年9月4日
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2017年8月21日
FAQページを更新しました。
2017年8月17日
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2017年7月26日
FAQページを更新しました。
2017年7月11日
FAQページを更新しました。
2017年7月10日
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2017年7月3日
FAQページを更新しました。
2017年6月20日
図面データFAQページを更新しました。
2017年6月16日
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2017年6月1日
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第6回三井住空間デザイン賞
実施住戸

パークホームズ滝野川
設計:藤原洋平+板橋祐子 (フィールドフォー・デザインオフィス)

藤原洋平(ふじわら・ようへい)

1981年北海道生まれ/2005年武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部建築学科卒業/2007年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻六角研究室修了/2007年~フィールドフォー・デザインオフィス

板橋祐子(いたばし・ゆうこ)

1985年埼玉県生まれ/2007年法政大学工学部建築学科卒業/2009年法政大学大学院工学研究科建設工学専攻渡辺真理研究室修了/2009〜10年フィールドフォー・デザインオフィス/2010年〜フリーランス/2011年〜フィールドフォー・デザインオフィス
LDK,北東側を見る
東側「趣味のリビング」から,左手に「夫のリビング」,右手に「妻のリビング」を見る.
その間から見えるのがダイニングキッチンを擁する「2人のリビング」.
戸北側の「机ギャラリー」を見通す
「夫のリビング」から「2人のリビング」を見る.ふたつの空間を繋ぐ開口にも引き戸が付けられており,完全な個室にもなる.

コンペ対象ユニット(201号室)平面/断面詳細


第6回 三井住空間デザインコンペ概要

「住空間デザインコンペ」は,時代のニーズにあった「デベロッパーと建築家・デザイナーとの新しい関係」を探るひとつの機会として2002年から実施.
2006年に開催された第4回からは名称を「三井住空間デザインコンペ」とし,若手建築家の登竜門と位置付け,最優秀賞を「三井住空間デザイン賞」として表彰し,選ばれた最優秀案はそれに基づき実際に建設の上分譲されている.第6回の課題建物は,東京都心にあるファミリーマンション「パークホームズ滝野川」(13階建て,総戸数60戸)だった.提案にあたっては,「夫婦と共に成長する住まい」が求められた.応募登録1,331件,応募作品562点の中から,古谷誠章,光井純,渡辺真理,鈴木健の4氏による1次審査で8組を選出.2010年3月13日の公開2次審査の結果,藤原洋平+板橋祐子が三井住空間デザイン賞を受賞し,その提案が実際に完成した.

すべてがリビングとなる住まい

この空間は,「家族の適切な距離感」に合わせて変化させることで,住み手がどの年代でも居心地よく生活できる場をつくり出すことを目指している.
かつての日本家屋は,住み手自身がシーンに合わせて間取りをつくり替えながら生活していた.しかし近年,室名によって空間の機能を明確化するnLDKという思想が,結果的に住み手の行動を制限し,完全な孤立を生む遠因ともなった.一方でワンルームという思想は,逆に孤立することを許さない住まいとなる危険性を伴っているとも考えられる.どちらもプライバシーを重視しすぎたり,コミュニケーションを重視しすぎるあまり,住まいにおける家族との心地よい距離感を計りづらくなっている.夫婦や家族が共に成長し続ける中では,プライバシーやコミュニケーションのどちらかに偏った空間ではなく,年代やシーンによって対応し変化できる空間が重要なのではないか.
本案では,ひとつの空間を2枚の壁によって4つのエリアに分割し,そのうちのふたつのエリアを「夫のリビング」と「妻のリビング」という独立したそれぞれのためのリビングとし,そこを繋ぐ残りのエリアを「趣味のリビング」「2人のリビング」という共用リビングとした.「リビング」とはつまり活動の「拠点」であり,空間を仕切るものでも用途を限定するものでもないと考える.それらのリビング(拠点)は,引き戸よって完全に開放して共用リビングと一体化することも,閉ざすことによって小さな部屋をつくり出すことも可能である.夫婦や家族の成長や日々のシーンに合わせて,それぞれの空間のあり方が常に変化する.空間の機能や名称にとらわれず,住み手自身に,あらゆる場所とその組み合わせで多様な使い方や空間を生み出してもらえることを期待している.分譲マンションという住み手の見えない設計において,どの年代においても居心地がよく,あらゆる使い方を可能とする住まいに必要なのは,機能的観点からの空間の構築ではなく,住み手自身の想像力をかき立てるような,機能が曖昧なまま残っている空間ではないだろうか.
私たちが想像していなかった住み方と共に,家族と住まいが共に成長する関係を築く手助けとなれば大変嬉しいことである.

(藤原洋平+板橋祐子)

07
夫のリビング.
07
妻のリビング.
06
「2人のリビング」.ダイニングキッチンから見る.
 

実施住戸を訪問して

古谷 誠章
(建築家/早稲田大学教授)
最優秀作品が実現した.審査員にとっても期待といささかの不安が交錯する.しかし,早速見学させてもらった結果は,まさに上々だった.というより,むしろそれ以上というのが正直な感想である.
まだ外構が仕上がっていなかったので,屋外との関係は想像の範囲を出ないが,室内空間の仕上がりはコンペティションの段階で示された内観スケッチの雰囲気をほぼ完全に実現できていたし,それぞれの小さな空間どうしの関係は,入選時点でのパネルには表し切れなかったが,なかなか快適なものである.夫婦それぞれのリビング(兼ベッドルーム)には,引き戸が付加されて完全に個室化できるよう変更されているが,それによってかえって,このいわば「ワンルーム」内に,それぞれの「個」を開く閉じるのめりはりがついてよくなったと思う.
若い夫婦がそれぞれを使うパターンばかりでなく,むしろ子どもが独立した世代の夫婦,あるいは単身の居住者が一方を寝室に他方を書斎に,あるいは単身のむしろ高齢者が日頃はひとりで暮らし,時に子どもや友人が訪れて使うなど,さまざまな展開ができそうだ.まさに「夫婦と共に成長する住まい」にふさわしいデザインとなったのではなかろうか.

光井純
(建築家/ペリ クラーク ペリ アーキテクツ ジャパン,光井純&アソシエーツ建築設計事務所代表)

三井住空間コンペ審査会で当選案の応募パネルを見て以来,平面図に描かれていた空間の流動性が実際でき上がってみたら一体どのように感じられるのか,でき上がりをとても楽しみにしていたプロジェクトであった.最優秀に選ばれてから実現までには,現実的な納まりなどにも十分な検討がなされたようだ.まず,コンペ時には計画されていなかった引き戸が各空間単位に用意され,プライバシーの確保と空間の連結とが時と場合に応じて自由に設定できるようになった.これは事業者からの要望でもあったようだが,空間の開閉の仕方を注意深く工夫し,完成度の高いディテールによって実現したことによって驚くほどの空間の多様性が生まれている.またアイランド型のキッチンと一体となった大テーブルは,家の中心として存在感を持ちながらも,大きすぎず小さすぎず,リビングスペースの広がりと実にうまくバランスを取っている.隣地からのプライバシーに対しても水回りを中心に細やかな配慮が施されており,開放性を確保しながらもプライバシーに対する配慮を忘れていない.
デザイナーとして現実の暮らし方にもきちんと目を向けて,デザインをさらに進化させ,高い完成度でつくり上げた力量には並々ならぬものがある.今回のコンペを通して優れた感性と共に,現実ときちんと向き合う度量の大きさを兼ね備えたデザイナーに出会えたことは大変光栄であった.

渡辺真理
(建築家/法政大学教授)
この住まいの平面図には,4カ所で「リビング」という名称が使われている.個室や寝室という名称はどこにもない.標準的なマンションのnLDK図式とは様変わりしている.これを見て「主寝室」という空間概念がついに消滅したのかと考える人がいるかもしれない.しかし,「リビング」を「居室」という意味に捉えるなら,この住まいは閉鎖的な室の連続ではなく,半開放的でセミ・プライベートな空間によって構成されていることになる.よく例に挙げられる公営住宅51C型ではなく,公団住宅57型が,「2DK」という名称がその後の住戸平面の表示形式の規範になった点からしても,実はその後の集合住宅の住戸の原点ではないかとぼくは考えているのだが,「2」がじつは「個室」ではなく,フレキシブルに連続する「居室」であるところもこの住戸と共通している.連続するタタミ室(57型)という出発点から50年にわたる長い試行錯誤の後に「開閉する窓のある部屋」という新しい解決に到達したことになる.窓や引き戸を開閉するというシンプルな操作だけでこの住戸の印象は大きく変わるし,家族のライフ・ステージに対応して,たとえば「夫のリビング」は「夫婦のリビング」に,「妻のリビング」は「子どものリビング」にと容易に変換できるフレキシビリティを内在している.

鈴木健
(三井不動産レジデンシャル専務執行役員開発事業本部長)
6回目を迎える今回は,交通の便もよく,緑などの環境に優れた東京都北区滝野川に立地する「パークホームズ滝野川」を選定した.われわれ三井不動産レジデンシャルとして求めたものは,新しい夫婦のあり方をベースとした,夫婦が互いに成長し,変化しながら,生き生きと幸せに過ごすことができるプランの提案である.
完成した住戸は,独立した「部屋」とそれに続くリビングという概念を捨て,夫婦それぞれの「リビング」とふたりの「リビング」が緩やかに繋がり,そして時には完全に仕切ることができるほどよい「間」がもたされた,流動性に優れた空間をもつ住まいである.梁型,柱型,天井形状の納まりなども工夫し,70m2というユニットでも,図面上から考えられないような,驚くほどの空間の広がりを体感することができる.
分譲マンションは,「○LDK」という記号で理解されやすい.われわれはそこで将来展開される「くらし」のイメージでマンションが語られるようにしたい.回を重ねて,この三井住空間コンペの提起する視点は,ますます重要になっている.

応募図書(結果発表は『新建築』2010年4月号).

審査員が実施住戸を訪問.左の受賞者から審査員に報告と説明を行った.