2次審査結果発表

三井住空間デザイン賞

太田理加 (太田理加設計室)

玄関をあけて中に入ると視線の先には1枚の壁が佇んでいます.帰宅し扉をあけた時,まず目に飛び込んでくるのは人の手による暖かさ残る左官の壁.お気に入りの絵を飾り来客を迎えます.低く抑えられた天井の下を抜けると,右側には18畳のスペースが広がります.天井は一段高くなり,空間に広がりがでてきます.その高低差を使い間接照明が天井を優しく照らしています.リビング・ダイニングには表情ある灰墨漆喰の壁があります.壁を背にすることで空間に落ち着きと安心感が生まれ,友人を招いて食事をしたり,くつろいで話をしたりと,開放的なスペースとして利用します.またリビング・ダイニングと水廻りの隔てとなっているこの壁は,玄関からキッチンへ直接入ることができる勝手口のような導線を作ります.

バルコニーの床にはデッキ材を敷きます.素足で外へ出ることができ,室内からの繋がりを持たせます.
寝室は引戸を閉めることによって,よりプライベートな空間を得ることができます.寝室の開口部は両側に換気用の窓を設け,中心部分は東京の夜景を眺めるピクチャーウィンドウとし,眠りに落ちる前のひとときに夜景を楽しむことができます.ユーティリティスペースは,パウダールームとしたり,引戸を開けてリビング・ダイニングと繋げ,スタディルームや読書をするコーナーとしても自由に利用できます.また将来持ち物が増え収納が必要な時はウォークインクロゼットとして引戸で仕切ることもできます.

ここで生活する人がこの部屋の時間をつくっていくのを妨げないよう,壁・天井の色彩はできる限り抑え,床材は無垢材を使用し,できるだけシンプルな空間としました.タブローのような2枚の壁の設えが,部屋をやわらかく仕切り,閉息感をやわらげ,空間に自由を与えます.

(応募図書より)