佳作

「猿的密度論」

  • 角野渉
  • 市川徹
    (以上2名、首都大学東京大学院)
佳作 「猿的密度論」作品写真 ※作品クリックで拡大されます

 増加を続けるヒトに対して、都市は高層化することで対応してきた.その高層化は、巨大な箱にヒトを合理的に積層するという単純な床面積の乗算であったと言える.都市の中でヒトは重力によって地面に縛られ、さらに増加する密度との狭間で酸欠状態に陥った.その中に留まり続けたヒトの生きる本能はもはや麻痺し始め、やがてヒトはゲンダイジンに退化した.本提案は、過剰に圧縮されたヒトの生活を立体的に解放し、再構築するものである.

「森に生きるサル」から密度を導く.
森の木々は、日の光を求め上へ上へと成長し、互いが重なり合わないよう一定の距離を保ちながら、葉を広げる場所を探す.しっかり根を張り葉を茂らせた木々に、やがてサルが住み着く.サルは木の上を寝床とし、全ての木々を住処とする.木から木へと自由に移動する.
 敷地内に35本の木を植える.この木は、幹(人工地盤棒)とそれに取り付くスラブにより構成される.これらの木には、住居、ホール・図書施設などの公共施設、そして広場が全体に散りばめられ、それぞれが距離を保ちながら立体的に配置されている.住戸から散在する広場へ、公共施設へ、そして都市へ、木から木へ移るようにヒトはこの森の中を渡り歩く.
 住居部分は風呂やトイレがコアである幹の中に配置され、四方が開かれており、生活風景が密度をつくるひとつの要因として浮かび上がる.

 全体の密度を決定する互いの距離は、ごくヒューマンスケールに近いものであるが、ほんの少しそれを超越する.普通には手が届くはずもないが、飛びついたらひょっとしたら届くかもしれない、と思わせるような距離である.この距離感覚が支配する空間では、ほんの少しだけ身体のスケール感が拡張される.この新たに獲得された身体感覚は、我々をサルのように躍動する生活へ再び導いてくれるのではないだろうか.
それは、動物的活動を呼び起こす密度である.

我々は、サルへと進化する.

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