審査委員長 乾久美子
![]() |
|
|---|---|
上位4作品には,住民の居住単位に違いがあります.「みんな違ってみんないい」は,複数人が集まって暮らす個室に,住民全体で共有するスラブが接続されています.「Tool Hamlet」は,複数の家族が共有する納戸が主題です.一方,「にわとりよりどころ」は個人の集まりとしても成立し得る提案で,家族のシステムを前提としていない,ドミトリー的な形式と言えます.「ミツバチ・コミュニティ」も家族間ではなく個人間でのシェアが構想されており,100人の個人に対する提案です.「みんな違ってみんないい」の明快な構成には,共有空間をつくる強い意志が感じられ,建築のかたちのみでなく,スラブを共有し合う暮らし方まで提案が行き届いていた点を評価しました.「Tool Hamlet」は,仕舞われるものが納戸ごとに違い,それぞれにキャラクターが出ているなどとすれば,抜群の提案になったと思います.建築は中間集団に対してサービスされることが多いという意味で,個人向けのサービスがほとんどである現代では特異な産業と言えるかもしれません.100人の集団を対象とする意義を追求した作品を期待しましたが,そのような提案や議論は生まれませんでした.それでも,どんな人がどのように集まるか考えることでも,建築設計を社会に繋げられるように思いました. |
|
審査委員 藤本壮介
![]() |
|
|---|---|
1次審査では方向性の異なる4つの案を選定したつもりでしたが,どの案も共通し,プライベート領域の周辺に共用部を持つ構成に辿り着いていました.「にわとりよりどころ」はプライベート領域の存在感が薄く,寝室すらも壁のない開放されたプランが面白いのですが,鶏と共に暮らす集合住宅の魅力をもっとプレゼンしてほしかったです.「Tool Hamlet」は,より積極的に巨大な工房兼納戸のような空間を核とした共同体を提案すると,何段階も案が深化したように思います.「みんな違ってみんないい」における半公共的なスラブの存在は,集合住宅は今後公共建築のようになり得るという示唆に富んでおり,刺激的な議論が生まれました.今までにはなかった,新たな共有空間を定義づけるかもしれないと思えるような作品でした.「ミツバチ・コミュニティ」は周辺環境への展開や物資のリサイクルなど,プログラムの検討は十分できているものの,かたちの根拠として成立していないのが残念でした.4案ともシステムやソフトウェアを考えるだけではなく,最終的に建築の新たな発明に結び付け,人間の生活を向上させる提案をしてほしいと改めて感じました.佳作の中では,特に造形的な提案だった「100ちゃんねる」にも強く惹きつけられました. |
|
審査委員 増田信吾
![]() |
|
|---|---|
今回はプログラムや暮らし方に踏み込むため,家族像や社会の動きを振り返る必要があり,応募者はもちろん,審査委員にとっても難しい課題でしたが,家族特有のネガティブな問題や,共生することによるリスクの背負い方も射程に入れた案はほぼありませんでした.しかしその分,多くの案が設定次第で大きく発展できるようにも感じました.「みんな違ってみんないい」は,スラブを通じて住民間に双方向的な関係が生まれており,住まうことが集落を育てることに繋がっています.単独では抱えきれないスケールを持ったスラブを家族や個人で所有するとすれば,メンテナンスを通じた関係も生まれるかもしれません.「ミツバチ・コミュニティ」は,システムがサービスの範疇にとどまっているように思います.住民の働く場が集合住宅の中にある,というやや強引な設定をすることで,都市を登場人物が設定することもあり得たかもしれません.「にわとりよりどころ」は力作でしたが,低層部の開き方をはじめ,都合よく「シェア」する関係性に終始していました.「Tool Hamlet」は,本来なら隠されてしまう部分を他の住民が見えないけれど感じられるような納戸空間となっていれば,お互いが適切な距離を保ち,あるところで強く結びついた共同体が生まれたかもしれません. |
|
審査委員 堀井規男
![]() |
|
|---|---|
従来,家族が住まう箱として集合住宅があったわけですが,今回は拡張家族をテーマとしたため,あえてテーマから「集合住宅」というワードを外し「集落」として出題しました.しかし全体的に,拡張家族も含めた「家族」やその家族が集う「集落」とは何かについて,我われが期待したほど掘り下げられなかったのが残念です.さらに「シェア」「コミュニティ」「循環」など,このコンペで過去に出題してきたキーワードが多く使われていることも気になりました.2次審査の4作品のうち,「みんな違ってみんないい」,「にわとりよりどころ」は,多くの人びとの暮らす場がイメージでき,集落としての性格が比較的強く感じられました.残りの2作品はどちらもシェアエコノミーを題材にしていますが,家族ではない他人との間でも成り立つシステムのようで,物足りなさを感じました.「Tool Hamlet」はシェアエコノミーの概念を発展させるような提案があれば,より評価できたかと思います.計画条件として敷地外への越境も可能としていましたが,「ミツバチ・コミュニティ」は4作品の中で唯一,周辺環境との関係を示しており魅力がありました.現実社会でも少しずつ家族の変化が進んできており,我われ長谷工も常に考えなければならないテーマだと感じました. |
|
ゲスト審査委員 青井哲人
![]() |
|
|---|---|
今日の家族のあり方も歴史的なもので,今後変わり得るものですが,核家族や単身者を前提としてそれが交わるという発想を超える案は見つけられませんでした.「近代家族」がいかに私たちに深く浸透しているかを思い知らされるコンペでした.「ミツバチ・コミュニティ」は,リサーチが高密で質疑応答も立派でした.「にわとりよりどころ」の非人間の導入は,ひとつの着眼だけれどやや安易に思われました.1次審査の時から注目していた「Tool Hamlet」は奥に秘匿される納戸を共有の倉庫かつ玄関にするアイデアを提示しています.これがいちばん具体的な発展の可能性を感じた案です.「みんな違ってみんないい」は,近年地方都市に多数つくられている庁舎・ホール・図書館・美術館などに似た計画で,私が「ジャジャハウス」(『住宅特集』2307)をつくって暮らす経験からも,多数のメンバーが地域とも繋がりながら共同生活する場は住宅的なビルディングタイプからズレていくだろうという予測は的確な感性だと思いました.佳作の中では, 100人というスケールに向き合った「くつの家」や「1人の,100人の,1000人の,蠢く棲み処」が優れています.しかしどの案も,ほとんど闇のような他者との距離の重要性など,切実な問いが弱いですね. |
|









