主催:大東建託株式会社  後援:株式会社新建築社

最新情報

2016年2月26日
審査講評をアップしました。
2016年2月15日
2次審査結果発表をアップしました。
2016年1月26日
1次審査結果発表をアップしました。
2016年1月8日
公開2次審査観覧希望者募集を開始しました。
2015年11月2日
シンポジウムの動画配信を開始しました。
2015年10月23日
シンポジウムの動画を10月27日より配信します。
2015年9月1日
ホームページをオープンしました。
応募登録の受け付けを開始しました。
RSSRSS配信

過去のコンペ

    大東建託コンペ 一覧

審査講評

 

小泉雅生

今回は「賃貸住宅の公(おおやけ)」という大変難しいテーマでしたが,みなさんの苦悩の甲斐あって,非常に刺激的なアイデアが多く出てきたと思います.2次審査では賞を決めるために厳しいことを言いましたが,私たちは1次審査を通過した作品を非常に高く評価しています.最優秀賞は山本・稲垣案になりましたが,最後の最後まで太田・武井案と拮抗していました.私たちはコンペの要項をつくる際にある程度どのような提案が出てくるのかを想定します.住宅が少しずつ公に開く「公の(窓/階段/扉/玄関/庭/廊下/屋根/ピロティ)私の(窓/階段/扉/玄関/庭/廊下/屋根/ピロティ)」(太田・武井案)は,私たちが想定していた模範的な解答といえるでしょう.一方で,制度にまで踏み込んだ「『空』の賃貸」(山本・稲垣案)は,私たちの想定を越えた提案でした.そのスケールの違いが評価の分かれ目になったと思います.また,住宅の構成要素をシェアする「賃貸住宅が公」(山口琢磨案)や,モノで公と私の距離をつくる「Open Stock Apartment」(森・京兼案)など,興味深い切り口から議論を深めることができ,私自身大変楽しませてもらいました.今回のコンペ全体を振り返ると,はじめてテーマを審査委員自ら解題するシンポジウムを行ったり,海外から応募し入賞された方が出てきたりと,大変実りの多い回だったと思います.今後も多様な広がりを持ちながら継続していければと思います.

 

五十嵐淳

今回は,テーマに対する提案の内容はもちろんですが,個人的にはこれからどんな建築家が生まれようとしているかに興味を持ちました.課題を理解してうまく解ける人たちは社会に順応したよい成果を残すでしょうが,革新的なアイデアを生み出すのは難しいでしょう.1次審査の時に,昨今の設計アイデアはどれも既視感があると言いました.自分の仕事においても,私自身が生み出したかたちが何かに属さざるを得ないことに焦りを感じることがありますが,今はそういった現状から次のステップへ進むために,これまでとは異なる尺度のアイデアが必要です.その点で,「賃貸住宅が公」(山口琢磨案)は強烈な個性を放っていました.山口さんがスペインで生まれ育ったことを議論の中ではじめて知りましたが,今の状況を打開するには日本で染み付いた考えとはまったく違った角度から物事を見る姿勢が大切だと思いました.2次審査で発表した6組の提案は切り口が多様で,私たち審査委員の評価軸をどこに置くかで評価が変わったと思います.「賃貸住宅が公」を最優秀賞にするのは時期尚早かもしれませんが,私ひとりの審査であればそうしていたかもしれません.そういった一石を投じる案なので,停滞した現状を改善するためには,アイデアコンペで彼のような人を評価することは大事ですし,われわれの眼力が試されたように思いました.

 

鍋島千恵

今回は「賃貸住宅の公(おおやけ)」というテーマでしたが,2次審査で発表した6組は,いずれも独自の解釈で「公」に向き合った密度の高い提案だったと思います.「街(がい)の通りぬける径(みち)」(奥田・市古・江島・鈴木案)は隣地境界線を径(みち)という公の居場所として拡張することによって,手の届く距離から都市までの射程を持つ建築をつくりあげる手法が切れ目なく詳細に描かれていましたが,賃貸住宅の具体的なカタチがどうしても見えてこなかったのが残念でした.中でも賃貸住宅の在り方を明瞭に提案していたのは,山本・稲垣案と太田・武井案でした.「公の(窓/階段/扉/玄関/庭/廊下/屋根/ピロティ)私の(窓/階段/扉/玄関/庭/廊下/屋根/ピロティ)」(太田・武井案)は建築の部位を巨大化して街に開くことで,公を獲得しようという試みが魅力的でした.1次審査の時にはテーマパークのように感じ,周辺の街との繋がりが見えにくかったのですが,2次審査ではその普遍的手法を提示していたことが評価されました.そして最優秀賞の「『空』の賃貸」(山本・稲垣案)は現行の公開空地の可能性を広げる試みであり,空地を水平ではなく垂直に展開していくことで新たな「公(おおやけ)」を纏う高層賃貸都市を示した秀逸な提案でした.社会問題の解決にとどまらず一歩踏み込んだ未来像を描いていた点を高く評価したいと思います.

 

小林克満

第4回の本コンペに多数のご応募をいただきありがとうございました.2次審査では,審査委員から指摘された要素を組み入れながら,分かりやすくプレゼンしようとする6組の熱意が感じられ,充実した議論を行うことができました.私にとっては新たな賃貸住宅の可能性を広げる,たくさんの収穫がありました.最優秀賞の「『空』の賃貸」(山本・稲垣案)は現行制度や社会問題まで切り込んだ大変意欲的な提案でした.個人的には,住宅のエレメントを肥大化させることで公共性が生まれるという「公の(窓/階段/扉/玄関/庭/廊下/屋根/ピロティ)私の(窓/階段/扉/玄関/庭/廊下/屋根/ピロティ)」(太田・武井案)がとても明快で面白い観点だったと思います.入選作品の中では,ペットが公のコミュニケーションのハブになる「小さな同居人」(児玉・土岐案)や,住宅と自動車が一体となることで近未来的な新しい住宅のかたちを提案した「期間限定の生活拠点がもつ他者性,もしくはその余白について.」(ソノダ案)が魅力的でユニークでした.今回はコンペの開催に合わせて初のシンポジウムを行い,コンペのテーマを問うだけではなく,課題に対するより深い投げかけや私たちの考えを皆さんと共有できたと思います.今後もシンポジウムに限らず,さまざまな仕掛けを行っていきたいと考えています.