《共催》
三井不動産レジデンシャル 新建築社

《協賛》
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応募要項 応募要項
2015年5月28日
2次審査結果発表審査講評を公開しました。
2015年3月16日
1次審査結果発表を公開しました。
2015年3月4日
応募登録・作品提出の受け付けを締め切りました。
2015年2月23日
公開2次審査観覧希望者募集を開始しました。
FAQを更新しました。
2015年2月19日
図面データ(C-C断面詳細図)を追加しました。
FAQを更新しました。
2015年2月19日
FAQを更新しました。
2015年2月17日
FAQを更新しました。
2015年2月13日
FAQを更新しました。
2015年2月10日
FAQを更新しました。
2015年2月3日
FAQを更新しました。
2015年1月27日
FAQを更新しました。
2015年1月23日
FAQを更新しました。
2015年1月9日
図面データを追加しました。
2014年11月14日
図面データを追加しました。
FAQを更新しました。
2014年11月6日
ホームページ をオープンしました。
応募登録の受け付けを開始しました。
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第7回三井住空間デザイン賞
実施住戸

パークタワー高輪
設計:久曽神倫


久曽神倫(きゅうそじん・おさむ)

1980年愛知県生まれ/2003年芝浦工業大学工学部建築学科卒業/2005年芝浦工業大学大学院建設工学専攻修士課程修了/2012年坂倉建築研究所入社
「なにものでもない空間」より見る.各部屋が壁で仕切られながらも全体が繋がるワンルームにした「ひらく」の間取り.天井はスタッコ仕上げで,室内,室外が映り込む.
  上:「なにものでもない空間」より見る.「まねく」の間取り.
下:室1より見る.対角線上に,「なにものでもない空間」,室2が連なる.「あそぶ」の間取り.
:「なにものでもない空間」より見る.「まねく」の間取り.:室1より見る.対角線上に,「なにものでもない空間」,室2が連なる.「あそぶ」の間取り.
コンペ対象ユニット(402号室)平面
コンペ対象ユニット(402号室)平面 縮尺1/100
住戸専有面積:75.49m2 バルコニー面積:4.35m2


第7回 三井住空間デザインコンペ概要

「住空間デザインコンペ」は,時代のニーズにあった「デベロッパーと建築家・デザイナーとの新しい関係」を探るひとつの機会として2002年から実施.2006年に開催された第4回からは名称を「三井住空間デザインコンペ」とし,若手建築家の登竜門と位置付け,最優秀賞を「三井住空間デザイン賞」として表彰し,選ばれた最優秀案はそれに基づき実際に建設の上分譲されている.第7回の課題建物は,東京都心にある高層マンション「パークタワー高輪」(21階建て,総戸数92戸).提案にあたっては,「アクティブシニアの都市住居」が求められた.応募登録970件,応募作品440点の中から,古谷誠章,光井純,渡辺真理,井上徹の4氏による1次審査で9組を選出.2011年7月16日の公開2次審査の結果,久曽神倫が三井住空間デザイン賞を受賞し,その提案が実際に完成した.

装いを変える住まい

たとえば,その日の洋服を選ぶように,その日の「住まい方を選ぶ」ことができたらどうでしょう.
この住まいの中央には矩形の「なにものでもない空間」,外周にはL型の諸室が配され,それらは1本のレールに乗った8枚の「動く壁」によって緩やかに仕切られている.この「動く壁」をスライドさせるだけで,「なにものでもない空間」を中心に住まいは多様に変化する.「動く壁」を均一に配せば,ユニット全体が「ゆるく繋がるワンルーム」になる.別々の場所にいても互いの気配を感じられ,普段着のようにリラックスした心地よい距離感で過ごすことができる.(Alternative01参照)
最小限のプライベートスペースだけを「動く壁」で隠せば,玄関からリビングまでを「大きなもてなしの空間」として使うことができる.鏡面に仕上げた「反射する天井」に明るく街の光が映り込み,開放感が演出される.(Alternative02参照)
リビングを収納すると,東西に気持ちよく風が抜ける「大きなプライベートスペース」が現れる.同じ空間にいながら,それぞれの時間を過ごすのに十分な広さを得られる.(Alternative03参照)
「動く壁」と,それに囲まれた「なにものでもない空間」は,住み手のライフスタイルに合わせて,住まいを「装いを変えるように」自由に変えられる.季節,時間,そしてその日の気分に合わせて,新しい住まい方を発見しながら楽しんで使ってもらえることを期待している.

(久曽神倫)

実施住戸を訪問して

古谷 誠章
(建築家/早稲田大学教授)
常套的には単なる中廊下になるはずの通路にスペースを与え,「なにものでもない空間」と名付けて,住戸の4コーナーを結ぶ要の場所とする.たったそれだけの機転の利いた操作がこの傑作を生んだ.間取り的には上階に重なる普通の3LDKとさして変わらないはずなのに,内部空間の繋がりには驚くべき多様性と変化が生まれて愉しい.コンペ案の時に既にその予感は十分にあったのだが,実現された住戸内に立ってみると,その愉しさはアクティブシニアとされる夫婦の機微までを彷彿とさせるもので,まるでその生活が目に浮かぶような愉しさである.季節や昼夜などばかりでなく,その日その日のふたりの間の微妙な関係などが焙り出されそうで,少しばかり怖くもある.でもまあこの部屋を気に入って買ってくれるカップルなら,十分にそれを愉しんでもらえるだろう.白く明るい室内の雰囲気は,それだけで浮き浮きした気分を味わわせてくれるし,下がり天井部分の白く反射するスタッコ仕上げも効果的だ.たとえ別寝室として使われる場合であっても,対角上の両寝室がこの要の空間に繋がれることで大きなワンルームのような空間にも様変わりする.その時にリビング部分が主室から切り離される感覚もおもしろい.

光井純
(建築家/ペリ クラーク ペリ アーキテクツ ジャパン,光井純&アソシエーツ建築設計事務所代表)

第7回三井住空間デザインコンペ最優秀作品が完成した,という報告を受けて審査委員の皆さんとともに拝見した.入室する前に一度止められて,さて扉を開きます,と案内される.玄関を入ったとたん,部屋の対角線状に玄関から角の窓を通して外の景色まで一気に視線が抜けた.同時にスタッコの天井面が緩やかに景色を映し出し,白を基調とした軽やかな空間の印象とあいまって,ふわりとした身体感覚を誘った.コンペ案を審査した時の印象をはるかに超える優れた空間が,この限られた条件の中でも実に巧みにつくり上げられていたと思う.「なにものでもない空間」は実に絶妙なプロポーションで実現されている.この空間の寸法はミリ単位で何度も検討されてやっとこの大きさで実現されたようである.空間と絶妙な呼応関係の中でデザインされ,配置されたさまざまな家具は空間と一体となって,それぞれが言葉を発しているような詩的さを持つ.「なにものでもない空間」の可動間仕切りは唯一木仕上げを施されて,空間全体に明確な中心性を与えている.自分でもさまざまな生活のシーンを思い浮かべながら,可動間仕切りをあれこれと動かしてみたが,寝室,水回り,台所,書斎を自在に巧みに繋ぐことが可能であり,個別の部屋名では表現しきれない,新しいライフスタイルが示唆されている.今回のコンペはまさにアクティブシニアのための新しい暮らし方の提案がテーマであり,限られた空間の中でもデザインを工夫すればこんなこともできるんだ,ということを多くの人に知ってもらえる素晴らしい機会になったと思う.


渡辺真理
(建築家/法政大学教授)
久曽神倫さんによる第7回三井住空間デザインコンペの最優秀案は、住戸平面の中央に室を設け,その周囲を可動間仕切りにすることで可変性を与え,使用目的に応じて異なる室空間を提供可能にするというものだった.可変性がアクティブシニアの活動的な精神にマッチすると思えたし,住戸の中央に出現するこの室(「なにものでもない空間」と名付けられた)はその可変性により,食事室にも,パーティールームにも変わり得る.このコンペはこれまでも集合住宅の新しいユニットプランを生み出してきたが,久曽神さんの提案も十分これまでの提案に匹敵する新しさと可能性を兼ね備えていた.2次審査後の審査委員からの講評が,スライディング扉の納まりを考えてほしいというような技術的なリクエストに集中したのも,既にその段階でプランの持つ力は明らかだったからだ.完成した住戸では,可動壁のスライディング扉は天吊りとし,床に点在するマグネット式の振れ止めが扉を制御する仕組みになっている.扉を動かすとこの振れ止めがカチッカチッと立ち上がってくるアクションがなかなか楽しい.住戸を訪れると玄関からリビングまで対角線状に視線が通る.南角に位置するコーナー住戸の開放感がストレートかつ爽やかに演出されていた.もともと可動壁のためワンルーム的な利用も可能な住まいなのだが,住まいの中に対角線があることで,ことさらに空間の広がりが感じられる.確かに部屋の距離を最も演出できるのは対角線方向だが,住戸を貫通する対角線が実現された例はあまりない.往々にして廊下空間の存在のために失われている.その結果,マンションの住戸空間に共通するなんとない狭苦しさや圧迫感がないのがこの住戸の大きな魅力になっている.

井上徹
(三井不動産レジデンシャル取締役常務執行役員 開発事業本部長)
7回目を迎える今回は,優れた住環境を享受しながらも,都心であり高い利便性を併せ持つ,東京都港区高輪の「パークタワー高輪」を課題建物とした.今回のコンペにおいて三井不動産レジデンシャルとして求めたのは,子育てが終わり,自分の時間を有効に活用する,元気で行動的なアクティブシニアが,充実感を持って人生を楽しめる空間を提案いただくことである.完成した住戸は,中央に可変性のある「なにものでもない空間」を設けることで,「ひらく」「まねく」「あそぶ」という暮らしのさまざまなシーンに合わせて変化を楽しめるプランとなっていた.特に,「まねく」では,玄関からリビングまで住戸の対角線を一気に見渡せ,その空間の広がりは,通常の廊下があるプランなどでは感じることができない開放感であった.また,白を基調としたシンプルな空間の設えや,リビングと窓を映し出す天井のスタッコ塗装が,明るく開放感のある室内を構成しており,目の肥えたアクティブシニアにも高い満足感を与える仕上がりとなっていた.アクティブシニアの住まいを考えた今回のコンペでは,その「暮らし」のイメージに基づいた数多くの提案をいただいた.時代の変化に伴い,マンションが「暮らし」のイメージで語られる機会は今後ますます増えてくるだろう.その中で,三井住空間デザインコンペの提起する視点は,重要な役割を担っている.

応募案(結果発表は『新建築』2011年9月号).

審査委員が実施住戸を訪問.左から光井純氏,渡辺真理氏,井上徹氏.
右に久曽神倫氏.

 


水回りを見る古谷誠章氏.